ジュラシックパークの最新作を観た話

 

映画館で映画を見るというのは実に4年ぶりで、前回もジュラシックシリーズだった。

自分がシリーズものの映画を映画館で全作品欠かさずに観ているのはこのジュラシックシリーズだけであり、自分にとって思い入れのあるシリーズだった。

 

僕はもともとアニメや映画など長時間拘束された状態で何かを見続けるという作業が苦手で、歳を重ねていくと、よりその苦痛さに拍車がかかってしまい映画館という施設からはかなり離れてしまっていた。

しかし1作目を映画館で観たあの日の衝撃が自分の中ではかなり大きかったようで、ジュラシックシリーズの最新作が公開される度に自然と映画館に足が向く自分がいた。それほど愛着のあるシリーズなのだが一応今作がシリーズ最終作と言われており、今回はワクワクよりも少し寂しさを感じてしまった。

 

ネタバレをしない範囲での感想を書くと、やっぱりこのシリーズ最高〜、観に行ってよかった〜 という感じ。

1、2作目はアクション、パニック色が強く薄っすらと話題に出ていた生命倫理の問題などが4作目頃からかなり色濃く内容に絡んでくるようになり、それ以降は人間が生物の種を管理することの愚かさや地球の支配者と勘違いしていることにフォーカスを当てたストーリーが展開されるようになった。今作はその辺りの話をどんな風にまとめていくんだろうかと思っていたが、割と綺麗にまとまっていたように感じた。

 

やっぱりジュラシックシリーズといえばジャングルを彷徨って恐ろしい恐竜に遭遇して大パニック!という展開が王道であり観ているこっちもその展開を期待しているのだが、今作は伏線回収などの影響で人間ドラマや説明の場面が多くなり、どうしても退屈な場面が多くなっていたように思えたが、街中のアクションや展開など飽きさせない工夫がちゃんと見られて個人的にはそんなに気にならなかった。

 

4作目ジュラシックワールドでも多く見られた過去作のオマージュも、監督が同じということもあり今作も多く見られてファンからすれば懐かしい気持ちになったり嬉しい演出もあった。

 

が、やはり前述した通り全体的に説明シーンや人間ドラマのシーンが多くなったことで悪役に対する「こいつ悪いやつだな〜」という感情が入る前に次の場面に移ってしまったり、個人的には色んな恐竜が出てきて嬉しい反面、1種類1種類の恐竜の活躍時間が短かったりと頑張って詰め込みました感がどうしても出てしまったように感じる。

しかしなんだかんだ上手くまとまっていたし、今現在の人間に対する警鐘やタイムリーな課題など出ていたことも良かったように感じる。

もともと映画は頭を使わないで、爆発!派手なアクション!マシンガンぶっ放し!みたいな映像作品としての楽しみ方を自分はするので、まとめるとやっぱりいい映画だったな〜という感想に落ち着いた。

 

余談だが、若い女性のお客さんが意外と多くてなんだか嬉しかった。

男子というのは一度は恐竜にハマる時期がある、と勝手に思っているが若い女性がいると「やっぱ恐竜っていいですよね?あなた方も分かりますか」と まるで映画制作者のような気持ちになる。

 

本当に今作がシリーズ最終作かどうかは定かではないが、僕は続編作ってくれてもいいのよ〜って思ってます。

 

終わりです。

 

葬儀場の米粒の話

 

よく行く葬儀場の控え室の壁に米粒が付いている。

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その米粒は覚えている限り去年の秋頃から付いており、控え室の椅子に座ってはその米粒を眺めながら時間を潰すことが多い。

誰がどのようにしてそこに付けたのかは分からないが、付いた過程をぼーっと想像してみたりする。

 

葬儀の後には基本的に食事(お斎《おとき》と呼びます)があり、遺族の方が葬儀場に依頼して葬儀社さんが控え室に持ってきてくれる。

お弁当のような形の精進料理なのだが、そのごはんを食べている最中にむせて咳き込んだ時に米粒が飛び壁に付いたのかな、とか、連日の葬儀で疲れが溜まり、わけもわからず無性に米粒を壁に付けたかったのかな、とか色々考えた。

その答えを知ることはないのだが、その米粒を見るたびに色々と考えを巡らす。

そもそも部屋には葬儀社が掃除に入るはずであり、いくら白い壁と同系色の米粒といえど気付かないとは考えにくいのだ。それもあって僕は米粒に興味を惹かれた。

 

先日、その葬儀場に行って控え室に入ったら最近どこのコンビニのレジにも掛かってあるコロナ対策のビニールカーテンが控え室のデスクの上に掛かっていた。

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これで確信したが葬儀社は確実に米粒の存在に気付いている。設置する際に多少なりともデスクを動かしたり周りを確認したりするはずなので米粒の存在に気付かないわけがないのだ。

別に僕は全く怒っているわけでもなく自分でティッシュで取ることも簡単に出来るのだが、なんとなくこの米粒の存在が気になり、今のところ様子見をしている。まるで地域の野良猫をみんなで育てているような感覚だ、と一瞬思ったが米粒と猫は全然違うだろと自分で否定した。

いつまでその米粒があるか分からないが、その葬儀場を使う度に静かに見守ろうと思う。

 

終わりです。

 

怖い思いをした話

 

 

以前ツイッターに載せたのだが、小学校低学年くらいの頃に怖い思いをしたことがある。

 

ある日、家から自転車で30分くらいのところにある山へと続くキャンプ場でどうやら自殺があったらしいと噂が回ったことがあった。

僕が住んでいる町は今でこそ観光客で賑わっているが、当時は何の見所も無い静かな町で、そんな小さな町で起きた突然の事件にクラス中が沸いた。

当然のように様子を見に行く流れになり、同じクラスの10人くらいで学校が終わってからそのキャンプ場へと向かった。キャンプ場は普段から小学生の遊び場になっていたので、みんな慣れた足取りでキャンプ場から少し外れた雑木林に集合した。リーダー格の男子が「みんなで手分けして現場を探そう!」と仕切り、全員散り散りになってから現場を探し始めた。

 

自殺があったらしい、と言いながらどのような方法や場所で行われたかは誰も知らず(今考えると誰が噂を流したのだろうか)、適当に林の中を探ったり、少し山の上の方まで登ったりしたが、一向に形跡は見つからずあっという間に30分程経過してしまった。

小学生というのは物事にあっという間に飽きる性分で、みんな口々に嘘なんじゃないか?飽きてきた、などと言い始め次第に諦めて集合場所にどんどん戻ってきた。

探し始めたのが既に夕方だったので、辺りも暗くなってきており、全員が集合したタイミングで「誰が言い出しっぺだよ」など文句を言いながら暗くなってきたしそろそろ帰ろうよ、と全員で上を見上げると、集合場所の目印にしていた1番高い木のてっぺんに首吊り用の形になったロープが枝に掛かっているのを見つけた。

 

ギャア!と一斉に悲鳴をあげて雑木林から逃げ出し、全員自転車で一目散に家まで帰ったのだった。

 

この出来事を思い出してからネットで ○○(町の名前) キャンプ場 自殺 などで検索してみたのだが何の情報も出ず、ひょっとして自分の記憶違いなのでは?と思ってきたので、先日ちょっと時間が出来た時にその雑木林まで十数年ぶりに行ってみた。

キャンプ場は今はほとんど使われていないのか、入口のところにはチェーンが張られており、車を入口のところに停めてカメラ片手に徒歩で向かった。

記憶を頼りにしてキャンプ場から外れた雑木林に入って行き、背の高い木を探した。

 

10分程でその木を見つけた。

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真ん中の木である。

当時の感覚ほどその木は高くなかったが、記憶の中で見た木の形と全く同じでここだと確信した。

自分の記憶は正しかったことが分かり、なんだか嬉しく懐かしくなり数枚の写真を撮ったあと雑木林から出て帰ろうと車へと向かった。

 

自分の車の隣に男性が1人立っていた。車の隣で微動だにしない。

内心めちゃくちゃびびりながら男性に声をかけた。

 

「これ君の車か。違法駐車よな。ここうちの前なんよ。迷惑すぎるよな。もう警察に連絡したから。謝っても無駄だから。諦めてな。」

めちゃくちゃ怒っていた。早口でめちゃくちゃ怒られた。終わったと思った。

そのキャンプ場はそこそこ山の奥にあるので警察が来るまで20分程かかるとおじさんにキレながら言われた。非常に気まずい。とりあえず車を動かそうとしたらおじさんに車に乗るなと言われた。逃げると思われたのだろうか。おじさんは誰も信用しなかった。

信用されてないのに、警察を待つ間なぜかおじさんは自分の職業と職場を怒りながら説明してくれた。何で?普通は僕の職業とかを逆に聞くんじゃないのか。そうなんですね、とにかくすみませんでした。とひたすら謝った。自分が悪いのだが、地獄のような時間だった。

 

警察が到着した。パトカーかと思ったら原付で1人だけ来た。

到着した瞬間におじさんは警察にキレまくった。またやられた、早く看板を設置してくれ、など早口で文句を言った。

警察はおじさんをなだめてから、どうされたんですか?と優しく聞いてきた。僕はとっさに「うんちが我慢出来ずにキャンプ場のトイレを使っていました」と説明した。実際帰りしなにトイレに寄ったので嘘は言ってない。

それを聞いた瞬間おじさんは嘘みたいに怒りを収め、まあこの辺りトイレとか無いからな、と同調してきた。うんちに対して優しすぎる。とりあえず許してもらうことが出来た。

家に帰った時はもう真っ暗だった。違法駐車を二度としないと心に誓った。

おじさんすみませんでした。

 

終わりです。

 

最近みた夢の話vol.2

 

エルドレッドと仲良くなる夢

広島カープに入団した。
選手のところに挨拶に行ったらエルドレッドがダントツでいい人だった。
「イロイロオシエテクダサイ」と片言の日本語で接してくれた。
野村謙二郎も練習を見に来ていて少し話す時間があったが、目上の方にあんな丁寧な事言われたの初めてです、と言ったら野村もエルドレッドを絶賛していた。
ペナントレースが開幕して早々、5月に何故か選手全員で旅行に行くことになり、場所はなんと空中庭園だった(どんな球団だ)。
みんなでごはんを食べていたら空中庭園が空賊の襲撃にあった。
至る所で爆発が起き、みんなで脱出している時にそういえばこの旅行でエルドレッド見てないなと思い近くの選手に聞いたら「うどんの食べ過ぎで先週から故障者リストに入ってるよ」と教えてもらった。馬鹿だと思った。
目が覚める。

 

中国人vs母

母と車に乗って信号待ちをしていたのだが、前のバンが何故かバックしてきて思いっきり僕たちの車に当たって止まった。前の車の運転手は真顔のまま後ろの僕たちを見て、謝りもせずにそのまま別の道に走り去った。
なんなんだあいつはと悪態をついたら、母が「あれは中国人よ」と言った。とりあえず当て逃げは許し(許すんだ)、目的地へと向かった。
途中、かなり道幅が狭い場所に差し掛かったのだが、人がごった返していて車が通れるスペースはなかった。
しかし運転手の母は徐行ではあるがその人混みの中を構わず進んだ。車に人がゴンゴン当たるが母はお構いなしだった。よく見ると周りのごった返した人はみんな中国人らしかった。母は「こうしないと退かないのよ」と言った。
すると周りの中国人達はどこからかプラカードを出して何か一斉に書き始めた。書き終わったらプラカードを首から提げてあくまで車に気付いてない風を装いプラカードを僕たちの車に向けた。プラカードには片言の日本語で「わたしは とてもわるくない人」とか「よい心を もつわたし」と良い人アピールのような言葉が書かれていた。母はそのプラカードも完全無視し中国人を次々はねた。
目が覚める。怖い夢だった。

 

終わりです。

 

最近みた夢の話

 

夢日記です。

 

ヤクザの組に入る夢。

座敷のような畳張りの部屋で組長に挨拶をする。組には僕の姉も一緒に入ってくれて、僕のことが心配だったからという理由だった。申し訳なさと嬉しさで本気で泣いた。
その日は昼から宴会とのことで机を並べたり料理を並べたりした。宴会は僕のような入りたての下っ端も全員参加していて、向かいの男の子も今日入ったばかりとのことだった。
隣に座っていた可愛い女の子はまだ入って1週間らしく、地元の風俗店での勤務が決まったそうだった。この宴会の後に宣材写真を撮るので見ますかと聞かれ見ることにした。スタジオで撮るのかと思ったら宴会の部屋の隣の部屋で普通に撮っていた。口元の隠し方や、撮り終わった後に年齢を聞いたら平成8年生まれです、と言ったところも妙にリアルだった。
僕の初仕事はゲームセンターが閉まった後に機械に不正が無かったか調べたりクレーンゲームが正しく作動するかの確認作業だった(今思えばショボいな)。
他の下っ端達と機械を調べてる内に楽しくなってクレーンゲームをみんなでやりまくっていたら警官が突然店に入ってきて捕まってしまった。目が覚める。


バーで店長からキレられる夢。

小学校以来の同級生数人と飲みに行こうという話になった。僕は別の場所で飲んでいて後で合流することになり、他の友人達が飲んでいるバーに向かった。知らない土地の駅のそばのバーだった。
店に入ったら友人達はかなり酔っ払っていて、僕は軽く挨拶を交わしてからメニューを見たが、店の一角に何故か薬局のようなコーナーが設けられていて僕は化粧水がもうすぐ無くなりそうなのを思い出してお酒の注文の前にとりあえず化粧水を買おうと目当ての品を探した。
店長の少し大きな不快感を前面に出した声が聞こえたので耳を向けていたら、
「俺はこの地元を本当に愛していて、その治安を乱す輩が大嫌いだ。今日も駅前の道に堂々と違法駐車している車がいる。俺はああいうのが一番許せない」
とのことだった。
すると友人の1人が「その車僕のっスよ!」と笑いながら自己申告した。
その瞬間店長がカウンターから出てきて友人が座っていた席のテーブルを思いっきり殴りテーブルを真っ二つに折った。
店はシーンとなり友人達は無言で店から出た。僕は目当ての化粧水を見つけ手に取ったところだったが「無いな〜」とか言いながら化粧水を棚に戻し、そそくさと一緒に店から出た。目が覚めた。

 

イルカと仲良くなった夢。

高頻度で夢に出てくる海のような場所がある。
海なのだがプールのようにプラスチックのウキでコースが区切られている。大きさも25メートルプールくらいなのだが、底の方は海と直結していて生き物が普通に泳いでいる。天空の城ラピュタでパズー達がラピュタに着いた時、小さい池のような所を覗き込むと海底都市が広がってるシーンがあるが、あれに似ている。
水質や季節は夢ごとにバラバラで、夏の暑い時期で水質は澄んだ綺麗な時もあったり、冬の寒い時期で水質は濁り藻で底の方が全く見えない時もある。今回は冬で氷がたくさん浮かんでいるパターンだった。
修学旅行でその土地に来た僕はみんなと別れ単独行動でそのプールのような場所に来た。
ガイドさんから昔はあそこにイルカが来ていたが今の時期はイルカはおろか他の生き物もほとんどいないと言われていたので、そこに来たのは僕だけだった。
生き物はいないと言われたが、隅っこの氷の上に亀が1匹いた。それを見てなんとなく何かいるんじゃないかと思い、水面を手で叩き音を立てたら、離れたところにイルカが顔を出しているのを見つけた。
こっちにおいでと手招きするとゆっくり寄って来て目の前に顔を出してくれた。触ろうとしたらヒレを出してくれて握手するような形で触れ合えた。記念に写真を撮ろうとして携帯をポケットから出したら海の中に落としてしまい、アッと声を出した。目が覚める。

終わりです。

一蘭の話

書くことがないので一蘭の話でもしようかと思う。

 

一蘭といえばラーメンを食べる人なら一度は聞いたことがある名前だと思う。福岡に本社があるとんこつラーメンの店である。

 

僕は福岡出身だが学生の頃は京都に住んでいて、週に2回はラーメン屋に行っていた。色んな店のラーメンを食べてきた人間から一蘭の感想を言わせてもらうなら、「面白くないとんこつラーメン」だと思う。

 

本格的なとんこつラーメンの店はとにかく臭い。ラーメンが、ではなく店が臭い。なんなら店の前の通りが臭い。食べた後の口も服も臭い。しかし臭い店は大体美味い店だ。

一蘭は店も、店の前の通りも、食べた後の服も、臭くない。ラーメンも自分の中では全く気にならない臭さだと思う。

 

 

僕の住む太宰府には駅前に一蘭の店がある。

太宰府といえば太宰府天満宮がとにかく有名で土日はもちろん平日も観光客が多い。そうなると当然駅前の一蘭は毎日行列が出来るのだが、僕もラーメンが食べたくなった時、たまにその行列に加わる。

並んでる人の会話が聞こえてくるが「臭いね」という感想は聞いたことがない。しかしその太宰府店は別の意味で「臭い」のである。

 

太宰府天満宮が学問の神様(らしい)の菅原道眞を祀ってる影響で全国から受験生が祈願にくる。一蘭太宰府店はそれに乗っかる形で店がとにかく願掛け思考なのだ。

 

まず店に入った瞬間「幸せをー!」と言われる。

何が?

 

知っている方も多いと思うが一蘭の席は特殊で、全てカウンター席になっており自分のスペースがつい立てで区切られて周りから見えないようになっている。そこにコップや水が出る蛇口などがそれぞれ全ての席に完備してある。「味集中カウンター」というらしい。カウンターに名前を付けるんじゃないよ。

 

で、水を注ぐのだがコップがかなりでかい。でかいな〜と思って壁を見てみたら「TALL(通る)コップ」と張り紙があった。受験に通るということだろう。ラーメンを食べにきたらオヤジギャグを聞かされた。

ラーメンはすぐに届く。これまた一蘭独特のシステムで目の前は巻き簾になっており、そこから店員がラーメンを差し出すのだが店員の顔は一切見えず身体しか見えない。そんなシステムがあるか知らないが、風俗みたいだな、と思った。一蘭はラーメン界の風俗だった。

 

ラーメンを差し出す時に店員が「合格です!」と言う。再び 何が? と思ったがそういえば頼んだラーメンは「合格ラーメン」という名前だったと思い出した。丼を見ると、五角形の丼だった。五角、合格、合格ラーメン。まさかのオヤジギャグパート2。アプローチの仕方を変えてくるんじゃない。二段構えとは恐れ入ったが、心が徐々に疲れてくる。

 

味は前述したが面白くないとんこつラーメンといった感じ。臭みはないがとんこつラーメンとしてとにかく「並」である。どこにでもあるような味。不味くはない。

 

と言いつつスープまで飲んでいると丼の底に文字がうっすら見えることに気付いた。何だ?と思いスープを飲み干す。出てきた文字は「決定」だった。三段オチだった。流石に笑ってしまった。

 

普段の食後以上に疲弊した気持ちで店を出る。

すごかったな、と思い店を振り返り壁に書かれた文字を読んだ。

 

「細く長くのお付き合い、つるつる(鶴)噛め噛め(亀)、縁起良し」

 

やかましいわ、と思った。

 

終わりです。

 

オジギソウと狐の話



うちの庭は色んな植物が生えていて手入れをさぼっているとあっという間に雑草が増えて手がつけられなくなる。


先日業者も呼んで大規模な庭の手入れを行なった。僕はオジギソウという草が生えているエリアの雑草を抜く担当になった。


オジギソウとは手で触ると葉っぱがゆっくり閉じる草で、大人にも子供にも大人気の草である。

お参りに来た家族の子供に「あの草ちょっと触ってみ」と促して触らせると9割は喜んでくれる。この前も通りすがりの女性のお客さんがオジギソウを触ってキャッキャとはしゃいでいて、「面白いですよねー」と言いながら心の中で(ありがとう)と言いました。


そのオジギソウ周辺の雑草を抜くのだが、オジギソウの群生しているところに、触っても葉っぱが閉じない草があることに気付いた。

調べてみるとコミカンソウという草のようだった。見た目はオジギソウにそっくりで、オジギソウは種を植えて育てているが、コミカンソウは雑草だった。

隣で草むしりをしていた母が「擬態してるつもりなんかね」と言いながらコミカンソウだけをぶちぶち抜いた。僕はそのコミカンソウを見ながら、ふと頭の中に「虎の威を借る狐」の言葉が浮かんだ。



僕が通っていた高校は、元は工業高校で入学の少し前に共学になった学校だった。なので僕が入学した時は女子はほとんどおらず、ヤンキーが教室にひしめき合うような状況だった。


幸い僕はあまり人見知りしない性格なので、ヤンキーでも割りと普通に話せて友達は自然と増えたのだが、ヤンキーは身なりのことをよくからかう節があり、仲良くはなったが髪型のことや眉毛の濃さ、ズボンの丈を上げすぎだ、など度々言われた。それが煩わしくなってきたのと、周りに馴染むために腰パンをしたり眉毛を剃ったりしていた。


その後たまに中学の友達と久しぶりに会うと、風貌が変わった事に驚かれたり、ヤンキーの友達が多い事などで一目置かれたりして僕の中で変な高揚感が生まれた。ヤンキーの真似をして輪に入ることで自分の事を大きく見せようとしたのである。まさに僕は虎の威を借る狐だった。


そんなことをコミカンソウを見て思い出した。こいつは僕だ… と思いながら少しだけ手に力を込めてコミカンソウを抜いた。


終わりです。