入院した話


先日の朝、下痢だった。


僕はお腹がなかなか弱い体質で、便秘、下痢は割とよくあることだったのでその時も特に気にはしていなかった。

しかし昼になるにつれてトイレに行く回数がどんどん増えていく。昼休みはついにごはんも食べれずにトイレに篭りっぱなしという事態になった。

そして尻から出る水、水、水。もう出る物は何も無いのに、まるでチンピラに脅されてまだ金持っとるやろ、と身体中を探されるような錯覚に陥った。これはいつもの下痢とは明らかに違う。異常に思い午後は休みを取ってすぐに病院に行った。


病院に着き受付に症状を伝えた途端に「うわ、ノロウイルス来た」という冷たい視線。以前インフルエンザにかかった時も同じような目をされ、廊下の隅っこに座らされて目の前にでかいつい立てを置かれた。その時と今回も全く同じ対応で廊下の隅っこに案内され、僕の目の前にでかいつい立てが置かれた。久しぶりのつい立てだった。本当にこれで対策出来ているのか未だに聞けずにいる。


その後尻の穴に棒を突っ込むなどの検査を経て、流行中のノロウイルスではなく、おそらく急性胃腸炎だろうということだった。ただ脱水がひどく熱もかなり上がってきていたのですぐに入院ということになった。人生初の入院で、この時は少しテンションが上がった。


病室に案内され点滴をし、おそらく明日の夕方までこのままだと説明を受けた。この時すでに携帯のバッテリーも切れ、いよいよ暇になってしまった。


寝不足だったこともあり、ゆっくり休む良い機会だと思ったが、この日の夜勤の看護婦がまぁ当たりの強いおばちゃんだった。

点滴を刺されてすぐに寝てしまった僕は2時間後に突然叩き起こされ、「点滴1本終わってるやん。なんで呼ばない?」といきなり怒られた。怖い。そんなに怒らなくても、と思ったが、看護婦が出て行ってから廊下で「○○さんもう夜中やから!出歩かんといて!○○さん!!」

とずっと大きな声が聞こえて来たので看護婦さんも大変なのだと思った。


そこからは騒がしかった。

別の部屋からずっと聞こえる「おーーい、助けてくれーー。おーーい、助けてーー。おーーい、おーーい、助けてくれーー。おーい、死んでしまう。助けてー。」

というおじいちゃんの声。看護婦が助けに行かないところを見ると、おそらく毎日言っているのだろう。

暴れちゃいかんよ点滴が外れる、○○さんどこに行くの、という看護婦の大声。

深夜の病院の恐ろしさを初めて痛感した。


僕の好きな作家のこだまさんという方がブログで入院日記を書かれていて、よく読んでいた。こだまさんのブログには入院中の他の患者さんとのやりとりやエピソードがコミカルに書かれており、よく笑いながら読んでいた。

しかし現実の入院は違った。ここは地獄だ。


そんなことを思っていたら廊下をスリッパの音がパタパタと響いて僕の病室の前で止まった。僕が寝ているベッドからは見えないが、部屋のドアは開いており会話や音がよく聞こえる。

看護婦が「○○さん何してるの!」と言いながら駆け寄ってくる。

「あの子が遊んでほしそうやったから。小さいのに1人で可哀想やんか」

明らかに僕の部屋に向けておじいちゃんが言った。やめてくれ。そこからは僕のことが見えないはずだから確実に僕のことじゃないじゃないか。

子供なんかどこにもいませんよ、と看護婦が言うが、おじいちゃんはあの子と遊んでやらんと、と何度も繰り返しながら部屋に戻された。

とても寝られる気分ではなくなってしまった。


朝になると当たりの強い看護婦が来て興味なさそうに僕の体温を測った。全然下がらんね、と興味なさげに言った。

とりあえずありがとうございました、とお礼を言ったら「メリー胃腸炎マス」と一言残し部屋から出て言った。意味がわからない。なめてるのか。


結局入院はその日の夕方まで続き、合計11本もの点滴を打たれた。一週間は食事に気を使う生活を余儀なくされた。

皆さんもいつもの下痢とは違うと思ったらすぐに病院に行ってください。


メリー胃腸炎マス。


終わりです。