謎の生物を見た話

謎の生物を見たことがある。

 

保育園だか小学校低学年くらいの頃(よく小学4年生の夏、とかハッキリ言い切ってる文章があるけどよく覚えてるなといつも思う)、世間ではカブトムシやクワガタが流行っていて、周りの友達もよく飼っていた。テレビでは珍しい昆虫などを紹介する番組が多く、虫が好きだった僕はよく見ていた。

 

ある日父親と二人でテレビを見ていると沖縄までカブトムシやクワガタを捕まえに行く番組があった。

深夜、リポーター達が樹液がよく出る木に行きカブトムシやクワガタを大量に捕獲して番組は大盛り上がりだった。それを見ながら僕も大盛り上がりだった。

「この捕獲したオオクワガタ、なんと8万円相当の大きさです!」とレポーターが紹介した。

この言葉を聞いてから隣で見ていた父のテンションも上がってきた。こりゃあいいぞ、と釘付けになっていた。

番組が終わり僕はすぐさま父にクワガタを飼いたいとねだった。が、買うのは高いので後日捕まえに行くことになった。不純な気持ちの父とただ飼いたい息子の思惑が一致した形となった。

 

後日、早朝5時頃に近くの山に父と行った。僕の住んでる町は田舎の方なのでしばらく歩けばすぐに山がある。父が樹液の多く出る木の場所を知っていた為、その場所まで真っ直ぐ向かった。

その場所に到着して驚いた。予想より遥かに多くの虫が木に集まっていた。そして他の親子も数組来ていた。有名な場所だったようだ。一番大きな木にはカナブンやカブトムシやクワガタがひしめき合っていた。

言い出しっぺの僕はあまりの数に少し引いていた。父のテンションは最高潮だった。

それからセオリー通りに木を蹴ってカブトムシを地面に落とす作戦に出たが、ここで問題が発生する。

僕らが蹴った木にはクワガタもいたが実はスズメバチもいたらしく、それに気付かず木を蹴ってしまった為、スズメバチも一緒に落ちてきたのだ。

気付いた僕はすぐに逃げたがスズメバチは僕を追いかけてきた(後に父から聞いたが本当に追いかけてきてたらしい)。気合いを入れて真っ黒なダイエーホークスのキャップを被ってきた自分を恨んだ。

 

後ろから父が叫んだ。

「伏せろ!!!!!!!」

 

僕はそれを聞いて前のめりになりながら倒れ込んだ。そのとき、確かに見た。

地面に倒れた僕の目の前の草むらから謎の生物の下半身だけが出ていた。

 

完全に見た目の質感はトカゲの下半身なのだが、足が小さすぎる。

そして胴体はデカい。トカゲというより完全にヘビ並みの太さだった。僕はそのままそいつを見たまま固まってしまった。

そいつはすぐに草むらの中に引っ込んでしまい、急いで立ち上がって草むらを見たがもうそこには何もいなかった。

スズメバチは無事やり過ごしたが、そいつのことが気になってしまい、カブトムシどころではなくなってしまった。

結局ノコギリクワガタとカブトムシを2匹ずつ捕まえて帰ったのだが、虫たちよりもそいつのことが気になってしまった。家に帰って図鑑で調べたが、どれも違っていた。

 

今でもそいつを見た記憶は鮮明に覚えており、定期的にふと思い出す。この間トイレにこもって考え事をしていたら急に思い出したので書き記した。

 

ちなみにカブトムシ達は全部同じカゴに入れていたらノコギリクワガタが全て抹殺していた。それ以来ノコギリクワガタはあんまり好きになれない。

 

終わりです。