葬儀場の米粒の話

 

よく行く葬儀場の控え室の壁に米粒が付いている。

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その米粒は覚えている限り去年の秋頃から付いており、控え室の椅子に座ってはその米粒を眺めながら時間を潰すことが多い。

誰がどのようにしてそこに付けたのかは分からないが、付いた過程をぼーっと想像してみたりする。

 

葬儀の後には基本的に食事(お斎《おとき》と呼びます)があり、遺族の方が葬儀場に依頼して葬儀社さんが控え室に持ってきてくれる。

お弁当のような形の精進料理なのだが、そのごはんを食べている最中にむせて咳き込んだ時に米粒が飛び壁に付いたのかな、とか、連日の葬儀で疲れが溜まり、わけもわからず無性に米粒を壁に付けたかったのかな、とか色々考えた。

その答えを知ることはないのだが、その米粒を見るたびに色々と考えを巡らす。

そもそも部屋には葬儀社が掃除に入るはずであり、いくら白い壁と同系色の米粒といえど気付かないとは考えにくいのだ。それもあって僕は米粒に興味を惹かれた。

 

先日、その葬儀場に行って控え室に入ったら最近どこのコンビニのレジにも掛かってあるコロナ対策のビニールカーテンが控え室のデスクの上に掛かっていた。

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これで確信したが葬儀社は確実に米粒の存在に気付いている。設置する際に多少なりともデスクを動かしたり周りを確認したりするはずなので米粒の存在に気付かないわけがないのだ。

別に僕は全く怒っているわけでもなく自分でティッシュで取ることも簡単に出来るのだが、なんとなくこの米粒の存在が気になり、今のところ様子見をしている。まるで地域の野良猫をみんなで育てているような感覚だ、と一瞬思ったが米粒と猫は全然違うだろと自分で否定した。

いつまでその米粒があるか分からないが、その葬儀場を使う度に静かに見守ろうと思う。

 

終わりです。